ミルドレッドの魔女学校(The Worst Witch)を観た

Netflixで配信されている「ミルドレッドの魔女学校」を観ました。
これが予想を遥かに超えて面白かったので、久しぶりにブログが書きたくなりました。
 
◯The Worst Witch
原作はジル・マーフィー(Jiii Murphy)の「The Worst Witch」で、1984年発刊の児童文学です。
 
過去にもドラマ化されていたようですが、再度映像化され、現在は英国のCBBCで放送中。(英国ではseries4が放送中)
日本では、現在Eテレでも放送中ですが、Netflixでは既に第3シリーズまで配信されていて、こちらで一気に視聴しました。
 
時代は現代。魔法使いや魔女がいる一方で、その存在を全く知らない一般人もいる世界。
そんな中、一般人の少女ミルドレッド・ハブル(Mildred Hubble)は、ひょんなことから魔女学校に入学することに。
彼女の学校生活はトラブルばかりで、何度も退学させられそうになりながらも、その中でかけがえのない友人を得、大切なことを学びながら成長していく。
 
そんな物語です。
 
◯シリーズの魅力
正直のところ、この作品を見始めて2、3話くらいの時点で、こんなにハマるとは思っていませんでした。
じゃあ、どこに魅力を感じたのかを考えてみました。
 
元々少年少女向けの作品だけあって、シリーズを通して、お話のフリとオチが分かりやすく描かれていてとても爽快です。
1エピソードあるいは1シリーズで描かれた伏線が、きちんと回収されて最後にスカッと締めてくれる。
この成立している感じがとても好きです。
 
そしてその過程に盛り込まれている要素が絶妙なスパイスになって、この作品に引き込まれたのかなと思いました。
 
  • 主人公ミルドレッドの真っ直ぐさ
  • ミルドレッドと対立するキャラクターの存在
  • ドタバタコメディ
  • シリーズ終盤のハラハラする展開
これらの要素のどれか一つでも欠けていたら、この作品にハマっていなかったと思います。
 
◯主人公ミルドレッド
物語の主人公といえば、何かしらの欠陥があるけどやるときは真っ直ぐに立ち向かうというのが王道の一つかと思います。
 
御多分に漏れず、ミルドレッドもそんな主人公の一人で、右も左も分からないまま魔女学校に
入学することになり、案の定トラブルの連発。
それでも、持ち前の真っ直ぐさで困難を乗り越えていきます。
その有様が、シンプルながらも清々しくて胸を打つものがあります。
 
彼女の変化をシーズン1から3まで通してみてみると、
1は失敗を繰り返しながらも、少しずつだけれど泥臭く成長していく物語。
 
2はシーズン1を経て自信をつけたミルドレッドが、
1の時よりも主体的に魔女として生きる物語。
そして、シーズン2はクライマックスが本当に素晴らしいのです。
シーズン1から少しずつ蒔いてきた種が、見事に開花しています
 
そこには、ミルドレッドは“魔女の家系ではない”という
一貫して描かれてきたテーマの結末が描かれています。
これが、本編のシナリオと絶妙に交じり合って、最高の物語へと昇華されています。
 
シーズン3は今まで教わる立場だったミルドレッドが、
自分の学んだことを伝える側になっていきます。
それはそれでまたトラブルがあり、魔女学校のピンチがあるわけですが、
シリーズを通じて、徐々にミルドレッドの他の魔女への関わり方が
変わっていくのが面白いです。
 
 
◯対立するキャラクター
 
ミルドレッド・ハブルと対立するキャラクターも見事な個性を発揮し、
物語を一層面白くしています。
 
その1人が、ヘカテ・ハードブルーム(Hecate Hardbroom:HB)です。
HBは魔女学校の教頭で、伝統を重んじる厳格な先生。
 
魔女の掟を全く知らないミルドレッドが魔女学校で学ぶことをよく思わず、
何かと厳しく当たったり、トラブルのたびに退学させようとします。
 
けれども、ミルドレッドが困難を乗り越えるたびに、次第にその考え方も変わっていきます。
最初は心の底から毛嫌いするような態度ですが、
シリーズが進むにつれて徐々に彼女への理解を示すようになります。
 
それと同時に、厳格さの裏側に魔女学校への愛情があることが
物語の随所で描かれています。
その背景が物語に絶妙に挿入されていて、ただの意地悪な先生で終わらず、
キャラクターに説得力が生まれているような気がします。
めちゃめちゃ厳しい先生ですが、たまに見せる学校や校長への思いやりに
ホロリとさせられます。
 
そして、厳格なHBの過去がシリーズを通して少しずつ明らかになっていくのも見逃せません。
なぜここまで厳格な魔女なのか。なぜ厳格になってしまったのか。
この謎が明かされていく過程も、物語を盛り上げています。
 
もう一人忘れることができないキャラクターがエセル・ハロウ(Ethel Hallow)です。
エセルはミルドレッドと犬猿の仲で、ことあるごとにミルドレッドを目の敵にし、
常にトラブルを巻き起こします。
 
また、名家ハロウ家に生まれたことを誇りに思い、常に自分が一番で、自分だけが特別で、
他人より劣ることなどあってはならないという、滅茶苦茶なプライドの高さ。
そのせいもあってか、まあ性格が悪い。
 
シーズン1ではミルドレッドを陥れる彼女の姿が度々描かれています。
しかし結局は、その目論見はいつも失敗に終わり、
反対にミルドレッドは一目置かれる存在になっていきます。
 
ところが、シーズン2では少し様子が変わってきます。
エセルの意地悪さは相変わらずですが、同時にエセルの性格を
決定づけている彼女の家庭環境が次第に明らかになっていきます。
 
シーズン2は、エセルのバックボーンを描きつつ、
それが物語の主要なテーマとも上手く結びついています。
このあたりの話もシーズン2を傑作にしている要素だと思います。
 
こうしたエセルの姿を見て、彼女の目論見が失敗に終わった後の感情が
「ざまあみろ」から、「ああ、また報われなかった…」というものに変わっているのに気づきました。
 
エセルの行動がおしなべて、母親を振り向かせたい、認められたいという
承認欲求から生じていることに気づいたからです。
そう考えると、周囲から距離を置いて孤立してしまう彼女、
ねじ曲がった方法でしかアプローチができない彼女の姿が無性にいとおしく思えてきます。
 
悲しいかな、エセルの孤独はシーズン3まで一貫していて、
ミルドレッドの活躍に反比例して増していくようです。
そのたびにどうか、エセルが報われる日が来てほしいと思うのです。
 
 
〇コメディとハラハラの展開
 
ミルドレッドの魔女学校は基本的にはコメディ作品で、
そのうえでキャラクターたちの成長が描かれています。
この作品にここまで入り込めたのも、コメディ要素がかなり大きいかもしれません。
 
ここ数年は、自分自身がパッと見てわかりやすいものや単純なものを好む傾向になっていて、
この物語のなかで描かれるドタバタコメディはまさにそれなのです。
 
キャラクターがズッコケる、水をかぶるなどなど単純明快な面白さが爽快で、
それがこの作品の”つかみ”になっているのかなと思いました。
 
コメディ要素が”つかみ”になっているということは、それを取っ掛かりにして
ストーリーの本筋が描かれるわけです。
それは大抵シリーズの終盤にやってきますが、これがハラハラドキドキする展開で
コメディやキャラクターの成長もすべてひっくるめて、一つの物語として一気に昇華していきます。
 
どのシリーズにも共通なのが、毎回魔女学校に危機が訪れ、それを乗り越えるというものです。
そのいずれもが、ほどよく絶体絶命感を描いているのです。
 
あのキャラが、学校がピンチ!どうなるの!?という緊迫感が
ありありと伝わってくるのは、ひとえにそれまでの過程を一つひとつ
描いているからなのでしょう。
 
このあたりの、物語を緩めるところと締めるところのメリハリがはっきりしているのが
この作品を傑作にしているのだと思います。
 
 
〇シーズン4の配信を待つ
 
The Worst Witchは、現在英国のCBBCでSeries4が放送中のようです。
ここまでシーズン1~3までを一気に視聴してきたので、続きが早く見たくてうずうずしています。
そのうちNetflixでも配信されるはずなので、おとなしく待ちます。
それまでに、原作を読んだり、日本語字幕で見返そうかなと画策中。
 
何の気なしに見始めた作品にハマってしまうとは、
自分でも思いもよらないことでした。
 
シーズン1の序盤はやや退屈かもしれませんが、
視聴を続けて損はないと思っています。
興味のある方は、ぜひ視聴してみてください。